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ワインと地酒の専門店 森本 芳典さん(株式会社 森本商店 常務)
2009年10月31日
ワインと地酒の専門店
株式会社 森本商店 常務 森本 芳典さん
人の数だけ、それぞれのお酒がある―。
背景を引き出す"相談役"でありたい。
「お酒とは何か―?」。一言で答えるのはとても難しい。親しい人とおしゃべりしながら飲む酒、ひとりでしっとりと飲む酒、仕事上の接待で飲む酒…。お酒があるところにはいろいろな背景が広がる。お酒はお菓子と同じく嗜好品のひとつだが、どんなに時代が変わってもなくなるものではない。しかし、スーパーやコンビニなどで手軽にお酒を手に入れることができる今日、人々の意識が少しづつ変化していっているのは否めないだろう。昭和6年創業、佐賀のお酒事情をずっと見守り続けてきた老舗酒屋「森本商店」さん。「お酒とは何か―?」という原点に今こそ、帰ろうとしている。1年半ぶりの訪問だ。
Q・この1年半、不況、デフレなど社会が大きく様変わりしました。お酒業界ではどんな変化がありましたか?
A・良きも悪きも、大きなくくりで言うお酒が人々の生活に身近になってきた、とは言えますね。第3のビールなど低価格商品の登場、そして新商品の回転の速さ…全部、この1~2年で起こったことです。同時に飲酒運転や、お酒が体に及ぼす影響などもテレビで大きくクローズアップしてきました。
Q・お酒に厳しい社会になってきたのに、低価格なお酒が人々の心をキャッチしている…時代の変化ですね。
A・それは肌で感じますね。数年前までは、外食産業におけるお酒の注文は全体の約2割を占めていたそうですが、現在では約7%に落ちている、と聞いています。不況の影響もあって、外でお酒を楽しむ人が少なくなってきた現在、夜更かしをする人が少なくなってきているようです。家飲みが多くなってきているので、早い時間帯にお客さんがいらっしゃるようになりました。夜遅くに飲みたい、と思ったら、コンビニで手軽に低価格のお酒が手に入りますからね。
Q・「森本商店」さんでは、現在主流となっている発泡酒や第3のビール、箱酒やペットボトル系のお酒は置いていませんよね?
A・いろいろと悩んだところですが、回転の速い消費社会の中でも「役割」があると私は思っています。創業以来、ずっと信念にしていることですが、うちでは「いい酒を残したい」、この一心に過ぎません。だけど、「いい酒」が「うまい酒」とは限らないんですよ。でも、私の長年の経験から、ほかのものと同じく「いいものは残っていく」と思っています。どんな条件にしてもいいものは美味しいんですよ。シーズンものはもちろん良さが際立ちますが、トレンドものは追いかけたらキリがないですからね。
Q・高いけれど気に入ったお酒を飲む、低価格で気軽にお酒を飲む。現在、この二極化にあるように思われますが。
A・その中間層が家計から嗜好品を切っていく状況にあるんでしょうね。逆パターンもあるんですよ。発泡酒にばかり慣れていると、本物のビールが苦く感じてしまう、という人も知っています。その人にとっては発泡酒が「うまい酒」なんですよ。私としては、「いい酒」は「値段に釣り合うお酒」だと思っています。そういったお酒を選んで置いています。
Q・では、森本さんにとって「いい酒」とはどんなお酒だと思われますか?
A・ズバリ、「余韻」と「キレ」があるお酒ですね。むろん、個人差はありますが、ビール、日本酒、ワイン、焼酎、ウイスキー…すべてにおいて、飲んだ時にイヤミが口に残らず、スーッと切れていくお酒です。例えるならお寺やお仏壇の鐘ですね!打った時にカ~ンと高らかに響きますが、少しの間余韻を残しながら響き続き、いつの間に消えている…。わかるでしょうか(笑)。この「余韻」「キレ」があるお酒を皆さんに提供したいですね。
Q・「お酒スタイルは人それぞれですが、ネットも含め手軽にお酒が手に入る状態です。酒屋さんといえば「お酒の相談役」としての仕事も最重要ですよね?
A・お酒のスタイル、好みは人の数だけありますから、贈り物の時など何を選んでいいのかわからない、という時に活躍するのが、酒屋だと思います。お客さんの顔を見て、会話をして、その家庭の味まで聞き出し、その料理に合うお酒を引き出す―これができるのは地域の酒屋ならではの仕事です。お酒は酔うのが目的だけではないですからね。お客さんの求めるものに対応し、需要には完璧に供給することを心掛ける。この原点に立ち続けていたいです。
Q・11月はボジョレー・ヌーボーの解禁日がやってきますね。今年のお薦めは…?
A・ボジョレー・ヌーボーの魅力は、新酒特有のフレッシュさ、さわやかでライトな口あたりです。香りもフルーティーで、渋みが少なくどなたでも楽しくいただけるワインですね。今年は、自家栽培ブドウを中心とする小~中規模な蔵元である「ドメーヌ」ものがお薦め。平均樹齢50年の樹から収穫したブドウを使用したものなど、コクと味わいに深みがあるクラシックなボジョレーが、当店ではイチオシです。残念ながら、ネット販売はできないのですが、1995円~3990円まで約6種用意しています。
Q・ワインセラーが5つもある「森本商店」さんですが、森本さんご自身はワインが大好きでいらっしゃるんですよね。
A・お酒は何でも好きですよ。仕事で味見をする以外にプライベートでは、夕食の料理に合わせてお酒を選ぶのが楽しいですね!お酒には料理、料理にはお酒、と2つは切っても切れない仲ですから。飲む時のシチュエーションなど背景が重要ですよね。グラスを変えるだけでも味は変わりますしね。かといって、そこまで敷居が高いものでもないんですよ。美味しいか美味しくないか感じるのは、自分次第ですから。11月末に「秋のワイン会」を行う予定です。ボジョレー・ヌーボーを始め、数種のワインと料理を楽しむ会なのですが、詳細が決まり次第、ブログで情報をアップしていくので、興味がある方はぜひチェックしてください。
Q・これからお歳暮シーズンに入ってきますね。ネットでも手に入るお薦めのお酒を教えてください。
A・通常では手に入りにくい、ちょっとグレードの高いお酒を用意する予定です。お正月ぐらいはいいお酒を飲みたい!という方にピッタリ、定番以外のものですね。青森の大吟醸純米酒「王松」は、全国で500本ぐらいしか出ないのですが、そのうち30本が11月下旬にうちに入ってきます。こちらはお店でしか販売できないのであしからず。また人気の鹿児島地焼酎「赤兎馬」の季節限定品「極味の雫」、年に2回入荷で、現在売り切れ中の鹿児島芋焼酎「農林二号」も入ってきます。11月下旬~12月上旬にかけて、「さがファン」のページをのぞいてください!新商品は随時アップ中です。これからも地酒やローカル性を大事にして、お酒と向き合っていきたいと思っているので、自慢の逸品をぜひサイト上で、お店で選んでくださいね。

店内には、約3000種のお酒がズラリ。「さがファン」で人気の商品は、鹿児島地焼酎「赤兎馬」、佐賀地酒「東一」、佐賀地焼酎「菱娘」などだそう。

お酒は、日本酒、ワイン、洋酒…とコーナーが分かれていて、見やすくディスプレイされている。

店内には、まるでバーのようなプライベートルームが!一般の方は入ることができないが、ここでまったりと新酒やオールドヴィンテージもののお酒をお店のスタッフで利き酒するそうです。

店内に5つあるセラー。中に入るとひんやり。常に"良い酒"の"飲み時"を考えられて、お酒たちが寝かせられている。

「森本商店」さんがワインを仕入れた時期、1979年に作った記念のワインセラー。歴史の温かみを感じさせられる。
