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理研農産化工株式会社
岡部憲治さん
2008年06月23日

理研農産化工株式会社
福岡工場
製造部・取締役・製造部長
岡部 憲治さん
オンリーワンの食用油にこだわり続け27年。
油が変われば、料理の味も変わる。
昨今、原料不足で世界的に打撃を受けている製油・製粉業界。製粉業務を主とする佐賀本社、製油業務に携わる福岡工場。2つの"生きていく上で欠かせない"商品を、逆風に押されることなくコツコツと作り続け、世に送り出している「理研農産化工株式会社」。 製油・製粉ともに、約10年前より原料を九州のものにこだわり続け、大手会社では決してできない、そして小さな会社でも到達できない・・・地場の中小企業だからこそ、なし得る商品づくりを行っている、まさに「発展しつづける老舗」-エコブームの中、"本物のエコオイル"を研究、開発して7年。看板商品「とうふの大豆で作った油」の産みの親に開発秘話を伺った。
Q・製油を主に製造する福岡工場ができたのは1981年(昭和56年)。
国産大豆を使った家庭用オイルを作るプロジェクトは最初からあったんですか?
A・現在こちらでは業務用油7割、家庭用油3割を製造していますが、当初、製油工場は外国産大豆を使った卸用の業務用オイルを製造するのがほとんどでした。当時、製造担当として福岡工場に勤務することになった私に、先代社長が工場ができる前に言ったんです。「うちにしかない油を作らんか?」と。それがすべての始まりでした。
Q・それが国産大豆を使った油の開発に発展していったと・・・。
A・最初は悩みました。「何を言ってるんだろう?だって油はみんな一緒じゃないか」と正直思いましたね。
アメリカやブラジルから大豆を輸入して、業務用の油を作る-。それが当たり前と思っていましたから。一体何から始めていいものか唸りましたよ。でも私も一開発者。研究が大好きで、一から何かを始めることに不安と同時に士気も上がりました。
Q・家庭用オイル販売が始まったのが約10年前と以前お聞きしています。それ以前の17年間に、研究・開発の長い期間があったというわけですね?
A・ちょうど先代社長が亡くなった年に、国産大豆が大量に余った所がある、という情報を聞いたんです。もちろん、余ったものを処分するとそこは大打撃に遭うわけです。
ずっと新オイルづくりには悩んでいたのですが、ここで心を固めました。「その国産大豆を買おう!国産大豆でうちにしかない、新しいオイルを作ってみようじゃないか!」と。
Q・そもそも国産大豆で作った油と、輸入大豆で作った油の違いって何ですか?
A・"目的"です。輸入大豆は製油用(業務用)。国産大豆は豆腐や味噌など食品に使われます。油に使用することはまだ常識的な考えではありませんでした。つまり、国産大豆を原料にすれば、より食品に近い、料理に使いやすいオイルが作れると確信したんですね。
しかし、当時は製油業界でも初めてに近い試みで、イチかバチかの賭けみたいなものでした。万が一失敗したら、会社の命とりになるかも・・・というリスクもありました。そこで、現社長や幹部に相談し、「輸入大豆と同金額で、その国産大豆を買い取ること」という条件つきで、国産大豆を使ったオイルづくりが始まったんです。もちろん、国産大豆は輸入大豆に比べて料金が割高ですから、まずは失敗しても挽回できるように、先に手を打ったんですよね。相手先はただ処分を待つだけですから・・・スタートはまずまずでした。
Q・家庭用オイルづくりのスタートですね。開発話を教えてください。
A・仕入れたからには、徹底しましたね。妥協、という文字は一切なかったです。中でも苦労したのは、「分別生産技術」でした。外国産の大豆と絶対一緒にしない、純国産100%にこだわり、遺伝子組換え技術も現場に徹底させました。大豆一粒一粒、皮をむいて中の実から油をとるんです。その実に大豆たん白質が詰まっているんですね。
さらに皮をむくことで脱脂大豆のたん白質が50%になります。そして食品大豆で作っていますから、当然できあがりは油特有のベタベタ感はなく、サラッとしたものになるはず・・・そう信じ、日々研究、開発、テストを繰り返し、試作品を仕上げました。
Q・そして、2001年(平成13年)とうとう、看板商品「とうふの大豆で作った油」ができあがった・・・その時の気持ちはいかがでしたか?
A・まず、スプーン一杯油をすくって、ゴクンとのみこんでみました・・・。「これは・・・全然油っぽくない!サラサラしている・・・ひょっとして、これは大化けするかも!」と興奮しましたね。研究・開発段階においては、勝算はある程度あったんですが、それが想像以上の出来でした。そして、そこから世に出るわけですが、そこからも・・・大変でしたね(笑)。
Q・出来上がったのはいいけれど、それを消費者に届けなければいけない・・・開発者なのに、営業にも携わったのですか?
A・もちろんです!この商品は私の子供のようなもの。ネーミングもパッケージも全部私が決めたんですよ。商品ができてから3年間は営業ひとすじでしたね。やはり、一油メーカーとしては問屋に卸すか、量販店に置いてもらうか、が妥当な線なのですが、普通の家庭用オイルと比べ、料金が若干高いんです。原料の国産大豆自体の供給問題もあり、コストをギリギリまで下げても、他社の家庭用オイルと比べて割高でした。
そこで、ターゲットを絞ろう、ということになり、高級志向を狙ってデパートに置いてもらうことにしたんです。デパ地下で社員OGを2人、そして私の妻を引っ張り出し(笑)、小さなサラダをたくさん作って、オイルをまぶしお客さんに試食販売をしました。また、機会があれば、いろんな場所で焼き立てのフランスパンにオイルをつけ、試食販売・・・そのたびにお客様にアンケートをとったところ、「油って味がするんですね」「こんなサラッとした油初めて」「油って美味しいんですね」という良いご意見を多くいただきました。
Q・開発から営業まで・・・軌道に乗せるまでが大変だったのでは?
A・体がいくつあっても足りなかったですね(笑)。とにかく、口に運んでくれないと商品の良さがわからないから、味を見てほしい!とレストランなどにも直接行きましたよ。反応は良かったり、悪かったり・・・さまざま。でもいろいろな意見が聞け、より今後の開発においてのヒントになりました。そこで、少し落ち着いたころ、製造部長として現場に戻らねば・・・と思ったんです。どうやって、一般消費者が口に運んでいただくかという大きなPRも必要ですが、そのPRにおいての裏付けも必要だと思いました。つまり、このオイルを食すことによってどのような体内的効果があるのか等、しっかりした化学的解明も行わないと!と。これは、今後新しい商品を開発していく際でも、大きなテーマではありますね。
Q・今現在、製油・製粉業界は原料不足で大変な社会的現象になっていますが、その点で苦労される点はありますか?
A・原料の安定供給、それが一番です。もっと日本で国産大豆を作ってほしいのですが、いろいろと規制があり、ままならないところです。コストを抑えるために、しぼった大豆のいらない部分~脱脂大豆を醤油メーカーに卸したり、と工夫をしていますが、商品の値上げは否めません。
ですが、品質を落とすことは絶対にできません。原料はすべてがいいものではありませんが、その良悪含めての原料を使い、同じ品質の油に仕上げるのが私たちの使命です。この油は食べ物です。油自体に味があるので、この油を使うことで料理の味も変わってくるんです。油だけのことを考えず、料理とコラボレーションした時に、初めてこの油の良さがわかるんです。だから、本当にこの油の良さを分かっていただける方には値上げをしても、買っていただけると確信しています。「さがファン」などでのネット販売も大賛成ですね。メールで感想も送っていただけますし、今後の課題にもなります。
Q・昨今は空前の「エコブーム」ですね。他社もエコを売りにした油をどんどん出しています。随分前から、体にいい油づくりに取り組まれてきた身としてどう思われますか?
A・コマーシャルの威力ってすごいですね。大手製油メーカーはそれができるから、うらやましくもあります。でも、大手は原料の供給が間に合わないでしょう。比べて小さい企業は研究が追いつかないでしょう。私たちは、九州地場の中小企業として、分相応な売り方をしていこうと思っています。地道に足で稼いでいく・・・臨機応変に柔軟性を持って動き、軌道修正をしていけるのは、中小企業ならではの強みと思っています。今後は、なたねを原料とした新オイルづくりをしたいですね。日本、九州でやれることをしたい。そんな研究開発のことを考え出したら、またワクワクしてきました(笑)。
Q・油の研究って奥が深いんですね~。最後に理研さんの油コンセプト、読者にメッセージをください。
A・油の大切さはバランスです。日本食の一汁三菜と一緒ですね。お肉が美味しいのは油を使っているから。油は体内に食物と一緒に吸収されます。油は人間が生きていく上で欠かせない必須脂肪酸。バランスよく体内に取り入れないと、ビタミン導入など効果を発揮しません。現在、日本人の1日油摂取量は25%、欧米では30%と言われていますが、20%ぐらいに抑えた方がいいと思いますね。油と食事のバランスをぜひ、考えていただきたいなと思っています。そして、応援してくださる九州の皆さんに恩返しをし続けたいですね。
原料の大豆はほぼ佐賀産、福岡産の「ふくゆたか」「むらゆたか」。普段は豆腐や味噌などに使われる大豆だ
「食と油が同じ位置にあるものとアピールしたかった」と岡部さん自らが作られたちらし。
パッケージ、パンフレット・・・すべて岡部さんによるもの
工場の入口には、国産大豆、外国産大豆、なたね・・・など原料のディスプレイが。国産大豆は外国産に比べ大きく、美しい丸型をしている
家庭用オイルさまざま。お得なパックセットが「さがファン」でも人気だ

上の赤い看板は佐賀、福岡の街ですっかりおなじみ。佐賀本社の方ではうどんやパン、さまざまな粉の開発が進んでいる
