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さがファンBOOKS 古川英文さん

 2008年01月30日


福博印刷株式会社
新事業推進本部
文化事業推進室
出門堂 編集長
古川 英文さん

"地の利"を生かした活動を-。
入口大変、出口無限。本の世界へようこそ。

 「さがファン」のトップページの右横に緑の枠に囲まれた小さなコーナーがあるのをご存知だろうか-?「さがファンBOOKS」。
 美味しい食に囲まれた佐賀、伝統と文化が産んだ美しい工芸品を持つ佐賀、大自然に包まれた観光の地、佐賀。今、そのように息づいている佐賀がどのような歴史をたどって現在に至っているか、知る人は残念ながら少ない。何よりも、日本近代の礎を築いた幕末維新時に、佐賀出身の偉人たちがどれだけ活躍し、今の日本につなげていったのかという軌跡は、まだまだ埋もれている。
 その埋もれた軌跡を掘り起こし、一冊の"本"という媒体で、佐賀、そして全国に伝えていこうとしている人がいる。古川英文さん。「さがファン」を管理している福博印刷株式会社内出版部門「出門堂」に籍を置く古川さんの本の可能性への想い、故郷・佐賀への熱い想いを語ってもらった。


Q・「さがファン」店主訪問記、初の"食"じゃない店主ですね。まずはその素顔を教えてください!
A・ 現在、福博印刷の出版部門で2人の同僚とともに、日々本作りの企画から販売まで行っています。ここで本作りに関わって3年半。それ以前は東京の出版社で15年ほど編集をやっていました。
 東京で仕事をしていく中で、"佐賀"に関わるものごとがなんとなく心にひっかかってきたんですね。佐賀から出た副島種臣(※)に関わる仕事を手がけたりもしました。その間、副島種臣やその背景などについてチラチラ見たりしているうちに、どんどんのめりこんでいきまして・・・・・・。


Q・実際、久しぶりに故郷に戻られ、同じ出版業を始められていかがでしたか?
A・ 佐賀は古代から日本の中で重要な位置を占めた土地で、全国的な観点からも着目すべきことが少なくない。でも、その事実が全国レヴェルでもう少し知られてもいいのでは、あるいは知られるべきなのでは、と思いました。
 アニメや物語にはヒーローが出てきますが、卑近なことで言えば、私自身が幕末維新や明治の偉人たちをながめていると、佐賀には本当に生きていたヒーローがいるんですね。私にとっては副島種臣が正義のヒーローだったりする。実際生きたヒーローについて知ることによって、自分自身の人生の教訓、支えになったりすることがある。佐賀にかぎらず全国にたくさんいると思いますが、まだあまり知られていないような人たちの中にも、私たちが生きている上で、なんらか考えさせるような生き方をした人物、あるいは手本となるような人物がたくさんいる。そうした人々について考えることによって、さまざまな問題が提起される。大変地味ですが、そういう人々を掘り出して話題にすることがおもしろくなってきたんですね。


Q・一冊の本ができあがるまでの工程を教えてください。
A・ 本によってさまざまですが、例えば、「八賢伝」は構想約半年、初めての幕末維新案内書として、従来とは異なる視点で、年齢を問わず読めるものを構想しました。
 そこで、著者として佐賀を代表する郷土史研究家である福岡博先生に依頼をしたのですが、実は、これ、書いてもらってないんです。福岡先生の前に小学校高学年の女の子を2人座らせて、語ってもらったものをもとに本をつくったんです。
 企画の段階で本の出来上がりがおおよそ見えているのが理想です――もちろんいい意味で裏切られたいとは思っていますが――。想定した本にするためにいくつかの手を打つわけですが、この場合は、福岡先生のお力添えを得て、「わかりやすくおもしろい」という感想が多く寄せられ、ホッとしていますね。


Q・構成の面でもいろいろな工夫をされているのですね。
A・ 「あの人はこれをした」だけなら、単なる事実の羅列ですよね。事実というようなことに私はあまり興味がわかない。歴史の中に、事実や史実といわれるようなことが果たしてどの程度あるんでしょうか?
 私は昨日の自分の行動すら、例えば「なんのためになにをした」などと「事実」として説明できることが見あたりません。けれども、幕末維新の佐賀の人たちが生きた時代の"立体感"みたいなものを持たせることは意識しました。偉人たちの功績といわれているようなことを、大きな歴史のスケールの中で位置づけてみようと試みました。視点をもつという意味で、歴史を語るというのは過去を知ることではなく、現在を考える、といってもいいんじゃないかと思っています。


Q・本の著者を選ぶ時の基準ってあるんでしょうか?
A・ 本の企画、テーマの輪郭が見えてきたら、知りうる著述をもとに書き手を探し、最終的に1人にしぼります。佐賀を題材にしたことを書いていただくわけですが、"最初に佐賀ありき"、ではなく、"結果として佐賀"、なんですよ。だから著者は全国から探します。
 佐賀でいい本、ではなく、全国でいい本を目指しているので。外国人の方も著者候補にいますよ。


Q・編集者としての役割は何だと思われますか?
A・ ぶっちゃけ雑用係、裏方、黒子です。有能なことよりも熱心であることのほうが成果につながるような気がします。でも編集者として、形として"遺る"本を作ることによって、50年後~100年後の読者に対してもそうですが、時代に対して小さなひっかき傷をつけたい、というふうには密かに思っていますよ。


Q・一冊の本で佐賀をアピールすることの可能性と不都合は…?
A・ ずばり"地の利"ですね。地方の優位性。地方だからこそできることがあるような気がしています。今の政治と似たようなところがあるかもしれません。
 中央は硬直し、地方の裁量が大きくなっている。中央の商業ベースでは出版できないような、地味な本が地方では出版できる。そしてその出版の意味を読者が想像以上に評価してくれたりするのは驚きです。しかし、デメリットとしてはやはり流通や販売そして告知の面ですね。その本を欲しいと思ってくれる読者まで出版の情報を伝えるのはかなり難しい。ここが今からの課題でしょうね。


Q・まず本を手にとってもらわないと何も始まらない、ってことですね。
A・ 本は、読まないでも買って棚に入れておくだけで意味があると思っています。自分がある時気にかかったという意味での痕跡である本が、棚からじっとにらんでいるようなところがあります。読めば、著者の考える世界に触れるわけですが、そこに読者の世界も発生するのではないでしょうか。そして、棚に戻って10年後に、また再び棚から取り出され、10年前とは違った新しい世界を作り出したりするのです。またあるいは、頁をめくる指の感覚がはたらいたり、カビ臭いにおいがしたり、偶然開いた頁からついつい夢中になって読みふけったり、読書は肉体や感覚のようなものを含めた全身運動のような側面を持っているように思います。
 本を読者に届けるのは大変なことですけれども、今後は「さがファンBOOKS」などを利用して、告知や情報を随時更新していこうと思っています。ほったらかしにせず、ネットの有効性も勉強して、ブログも更新して…結構大変ですね(笑)。でも、本は売りたい。いろんな人に知ってもらいたい。頑張ります!


Q・最後に「さがファンBOOKS」に興味を持ち始めたユーザーの皆さんにメッセージを。
A・ 「さがファン」を御覧の方たちは、食や観光に関心をお持ちでしょう。
私たちの視覚や味覚も生まれ育った背景と無縁ではないと思います。本を読むことを通して、視覚や味覚、五感をいろいろな意味でふくらませていただけたらと願います。

※副島種臣(そえじま・たねおみ)1828~1905
佐賀藩士。明治政府の元勲で初代外務卿。「蒼海」「一々学人」と号し、書家としても名高い。佐賀を代表する勤皇家・枝吉神陽の弟で、その言行から「正義の人」「神秘の人」と呼ばれた。


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投稿者 さがファン : 09:07 | コメント (0) | トラックバック