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嬉野温泉 旅館 大村屋 北川弘文さん
2007年09月26日

嬉野温泉 旅館 大村屋
専務・北川弘文さん
歴史と伝統が息づく嬉野温泉。長い時間をかけて、親しみのある街へ。
多くの温泉地があふれる佐賀県の中で、全国区の温泉といえば「嬉野温泉」。つるつる、 トロトロの泉質が"日本三大美肌の湯"として某メーカーの研究所に選ばれ、各地からファンが日々訪れる。そのお湯のなめらか具合は入ってみないとわからない、全国でも二つとない感触だ。女優や芸能人がひいきにしているという噂も絶えない佐賀が誇るべき温泉地―嬉野温泉。その温泉街で創業天保元年(1830年)、一番の老舗である「大村屋」に赴いた。老舗でありながら、独自の「大村屋特製 抹茶プリン」を新開発。口コミで人気を呼び、ついに昨年には全国のテレビ放送で放映。爆発的人気商品を生み出した顔も持つ、親しみ深い旅館である。昨秋からちょうど1年ぶり、のれんをくぐると変わらない笑顔で専務の北川弘文さんが私たちを出迎えてくれた。
Q・大人気の「大村屋特製 抹茶プリン」ですが、昨冬テレビ放映された後の反響はいかがでしたか?
A・テレビ放映後の1週間ぐらいは注文がひっきりなしでしたね。電話で、ネットで、日ごろ受けない北海道や東北地方の方からのご注文や、その後に別で関西地方のみでテレビ放映された時は、関西圏内からの注文ばかりで、テレビの反響のすごさを感じました。おかげさまで、佐賀、九州だけではなく、全国のご注文リピーターも増えたんですよ。
Q・その後、全国さまざまな場所で抹茶プリンが登場していたらしいですね!
A・おかげさまで、今年3月には東京都内の東急デパート8店舗の「お菓子まつり」に出店させていただきまして、数千個も売れたんですよ。デパ地下の威力ってすごいんですね。そのほかにも、「うちの店に置きませんか」等、オファーが良く来るようになりました。高速道路のサービス・エリアとかもありましたね。でも、このプリンは大量生産ができず、日持ちも1週間という厳しい条件あっての美味しさですから、なかなか需要に対応することができないのが残念ですね。
Q・大村屋さんとしては、この状態をどう受け止めているんですか?
A・嬉しいことだとは思いますが、私どもは本来は旅館業を営んでいるもので…(笑)、プリンが一人歩きしているかな、と感じてもいます。だから、できるだけ多くの人にプリンを食べていただきたい、というより、本当にこのプリンを「美味しい!」と思っていただける方にずっと食べ続けていただきたいと思っています。ですので、ブレイク前から製造方法も量も料金も、もちろん味も変えていませんよ。
Q・特製温泉湯豆腐は、今からの季節にぴったりですね。
A・温泉湯豆腐といったら、嬉野名物ですからね!嬉野では「嬉野温泉湯豆腐協議会」という団体があって、湯豆腐のPRの仕方を日々練っています。さまざまな旅館が湯豆腐をネット販売していますが、難しいのが日持ち。短すぎてなかなか全国まで回らないのが現状です。ただ、本来名物料理は、その土地に来て、そこの空気に触れていただくのが一番美味しいもの。ネット販売の湯豆腐をきっかけにして、ぜひ嬉野に訪れてほしいですね。
Q・今、さがファンで出しているのはプリンと湯豆腐2点ですが、1年前のインタビューの時は、いろいろ商品開発をされていると聞いていましたが…。
A・いろいろ考えてたんですけど、出てないですよね(笑)。…というより、プリンのブレイクでも思ったんですが、新しいものをどんどん打ち出していくよりも、長く親しまれ、愛される商品だけを出したいな、と考え始めたんです。だから、今でもこのプリンと湯豆腐の2つなんですね。でも、プリンは旅館においては季節モノを出す予定です。10月からご宿泊や、お食事のお客様には、抹茶プリンだけではなく、秋の素材、栗を使ったマロンプリンをいただけるようにしています。
Q・旅館の方では10月から新プランが登場とか。詳しく教えてください。
A・10月からコラーゲンたっぷりの「美肌会席」が登場します。お食事のみ、ご宿泊のお客様どちらにも予約していただけます。佐賀産の鶏を白濁するまで2時間ほど煮出したコラーゲン100%の水炊き料理です。こちらに温泉をセットすれば、本当に翌朝はお肌がプリプリになりますよ。いろんなプランがあるので、お気軽にお電話でお尋ねくださいね。また、今年4月から木、タイル、石…と趣の異なる源泉かけ流しの貸切風呂(1人50分・1500円)がオープンして、好評をいただいております。ご予約してどうぞ。
Q・これは女性が飛びつきそうですね。嬉野は"美肌の湯"として有名ですが、他温泉と比べてどこが違う、というのは大村屋さん的に感じるところはありますか?
A・佐賀県内では一番有名な温泉ではありますが、九州新幹線の完成は脅威ですね。それに向けて対策を練っていかなきゃ、というところはあります。嬉野は車で来る分は高速インター近くで便利ですが、公共交通手段がないですからね。また、温泉街の規模としては大分の湯布院と、黒川と同じぐらい。でもあちら側が同規模の宿が多いならば、嬉野は大規模の宿から、小さな宿までバラエティに富んでいますね。宿選びをする分は楽しいんではないでしょうか。また、温泉湯豆腐がいただけるのも嬉野だけですし…ただですね…。
Q・街自体に活力がない、ということではないですか?
A・そう、そうなんです。嬉野は「温泉」が有名ですが、その周辺の観光地、街に魅力があまりないのが懸念点のひとつ。まず、嬉野は"美肌の湯"として、女性に人気の温泉ですが、街が昔の男性中心の歓楽街の名残のまま。湯布院、黒川なんかは上手いですよね。
女性が好きそうなレストラン、カフェ、お土産やさん…。もう街自体ができあがっています。嬉野もお茶をはじめ、陶器…と女性がお湯以外に好む要素がたくさんあるのですから、小ぎれいなお店がこれから増えていかないかなあ、と考えています。その起爆剤のひとつが2年後にできあがる「古湯(ふるゆ)」なんですよ。
Q・「古湯」ってなんですか?あの古湯温泉と関係ないですよね。
A・いえいえ、もともと嬉野には「新湯」「元湯」「古湯」と3種類ありまして。なんといっても歴史のある温泉地ですから。長崎街道の中継地点ですので、江戸時代の参勤交代などのとき、大名さんやさまざまな旅人が疲れを癒すため、無料で入れる公衆浴場があったんです。それこそ、シーボルトや坂本竜馬も入ったでしょうね。いわゆる、今でいう「温泉センター」みたいなものですね。しかし、市が買い上げた「古湯」がおととし春の福岡沖地震で壊れてしまったんです。そちらを復活させる作業が今、進んでおりまして、2年後には、ずっと昔からあったような、洋館風のモダンな建物ができあがる予定なんです。
Q・それは楽しみですね!今後の目標をぜひ教えてください。
A・改めて思いましたが、嬉野温泉って歴史と伝統のある、すばらしい温泉街なんですよね。長い時間をかけてつくりあげてきたものを、すぐに新しいものばかり投入して変えることはできないな、と思いました。私どもの旅館もあと10年余で200年祭。長い時間をかけて、親しみのある街へ、リニューアルしていきたいですね。そのためには、若い世代たちとのバトンタッチが必要。大村屋という旅館そのものもそうですが、嬉野の町全体の活性化のために、若い人たちが嬉野の地に目を向けてくれればと願っています。今は、残念ながら、外に出て行ってしまう若い人が多くて、だからこそ、2年後の古湯完成が起爆剤になれば、と期待を抱いています。また、今夏「高校総体」がありましたが、全国の高校生アスリートたちを泊めて全館貸し切ったり、その応援団が宿泊してくださったり、年に1度は外務省の行事で、欧米各国の要人がご宿泊することもあります。中国の方、韓国の方も宿泊が多く、いずれはパンフレットやネットも、英語、中国語、韓国語を入れなければな、と思っていますよ。嬉野温泉の老舗旅館、結構グローバルに活動してるんです(笑)。
Q・ではネット…「さがファン」での新展開予定を教えてください。
A・これからゆっくり考えていきますよ(笑)。今のところは、プリンと湯豆腐2本だてで。
でもお約束できるのは、プリンは抹茶以外のものを考えているということですね。一応、ですが、期待しててください。

プルンプルンの「大村屋特製 抹茶プリン」。上の抹茶ソースはたっぷり。抹茶自体にほとんど何も入れていないので、シブ~いソースの味が甘~いプリンと絡んで、絶妙の味!

パクッとひとくちで食べてしまわないと、抹茶ソースが口からこぼれ落ちてしまうほど。
さがファンで売っているソースは別袋入りなので、量を調節して食べてもいいかも。

今年春、オープンした貸切風呂。木、タイル、石の4種類。「プリンで儲けたお金で作りました。なんちゃって(笑)」と北川専務。本当でしょうか…!?

激動の歴史を江戸時代から見つめてきた、大村屋旅館。名前の由来は、長崎の「大村藩」からとったもの。当時、長崎と佐賀の関係は深く、参勤交代の時は、宿先の瑞光寺を本陣として、大村屋さんを脇本陣としていた。
